寵愛と孤独『女王陛下のお気に入り』
アカデミー賞主演女優賞おめでとうございます!!
『聖なる鹿殺し』や『ロブスター』など変な映画を作ってきたヨルゴス・ランティモス監督最新作は宮廷内での愛憎劇!「いちばん見やすい」との声も聞いているのでどんなもんかと観にいってきました。
オリヴィア・コールマン×レイチェル・ワイズ×エマ・ストーンの演技合戦がおもしろく、また宮廷内での権力闘争をおかしみのある捉え方で描かれていたので7幕構成という大きな作りながらもまったく飽きることなく観れました。
今作の最大の特徴である魚眼レンズ・広角レンズを用いた撮影により、ギラギラした宮廷内が極端なパースや歪みによって圧迫感・閉塞感がより強調される。劇中内でもセリフで出ていた「歪んだ世界」の表現に違わぬ絵作りがされていました。今作を前から4列目で観た自分には画面が覆いかぶさるような歪みをより感じることができたので、クラクラするような体感がしたい方は是非前の席で観ることをオススメします!w
情緒不安定なメンヘラ・アン王女と幼馴染で側近のサラ、しょんぼり顔に黒いシャドーを入れるアン王女に対して「アナグマみたいね」とズバズバ言うサラの関係性は立場の上下はあれど対等な付き合いをしている。そこに没落貴族で娼婦にまで落ちぶれたアビゲイルが召使としてやって来てから歯車が狂いだす。
アビゲイルは再び上へ行くためにあらゆる手段を用いてのし上がろうと画策し、その匂いを嗅ぎ取った野党院のハーリーと共謀しサラを蹴落とそうと目論む。
もうアビゲイルがアン王女に対してのファムファタールにしか見えない!しかもアビゲイル扮するエマストーンが脱いじゃう上にテクもすごいからもう大変!中盤まではのし上がりから策略と陰謀と文字通り"飛ぶ鳥を落とす勢い"で上がって来る彼女は実質中盤までは主人公かも…
そんなアビゲイルに対して毅然とした態度で接し強権を振るうサラ。アビゲイルがどんな提案をアン王女にしようとも彼女の心の内をずっと見てきたサラは的確に好みを居抜き操る。しかしこれこそアン王女との歪な友情の形かもしれない。彼女的には操っているんじゃあなくて正しい方向へ導いているんだろうなぁと。なるべく威厳を失わず他者の犠牲も厭わずアン王女を幸せにする。ものすごく男性的な考え方で邁進するサラは恐ろしくもありカッコよくもある不思議。
今作で一番不幸なのはアン王女ですよね。サラとずっと一緒にいれば幸せに堕ちていったかもしれない。しかしアビゲイルという悪女と出会ってしまったばっかりに、王女の威厳を取り戻し始めたばっかりに、幼馴染とすれ違ってしまう。自分の意思を見せ行動した結果映った景色のなんと空虚なことか。聖なる鹿殺しもそうですが、選択と結果のキツさが今作でも存分に出ています。
三者三様の思惑が交差し、時に破綻し堕ちていく。蓋を開けてみれば実にヨルゴスランティモスらしい意地悪な悲喜劇でした。
『女王陛下のお気に入り』観た
— バシ (@bashix4) 2019年2月25日
ヨルゴス初心者にオススメ?宮廷内で起こる成り上がりと嫉妬の愛憎渦まくオンナたちの三つ巴!
主演女優獲ったオリヴィアコールマンのやつれ方、エマストーンのしたたかさ、レイチェルワイズの男性的な立ち振る舞い。魚眼レンズと広角レンズを使った歪んだ世界を堪能! pic.twitter.com/PVw8kW9SkC
「映画史に残る気持ち悪いスパゲティの食べ方」が観れるのはこの映画だけ!
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