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解放と依存『ミッドサマー』

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どうもお久しぶりでございます。今のところコロナに罹る事無く通常通りの日々を過ごしています。

映画館が自粛している間は映画そのものを観る量もガクッと減り、映画代がウイスキーボトルへと変換されていく事しきりです。(5本以上増えた)

再開するにあたって久しぶりの映画館、どこで館はじめをし、どのタイトルで映画はじめしようかと思っていましたが、コロナ前から公開されていたにも拘らず観逃してしまっていた今作をチョイスしました。

話題沸騰!口コミでお客さんも増え日本での興行収入も7億弱!また監督自ら「別れたほうがいいカップルに薦めて」なんていってる今作、その奇祭が果たしてどんなものなのか、(そして生きて帰れるのか)潜入してきました!

 


2020.2.21(金)公開『ミッドサマー』予告編

 

 

 

面白かった!

まずタイトル出るまでの悲劇がとんでもねぇ…

主人公ダニーがただでさえ不安症患ってるのに、酷い追い討ちすぎて「これ並みの人間だったら自殺しちゃうレベルだろ…アリアスターなに考えとんじゃ…」って思ったし、付き合ってる彼氏もまた“表面上いいヤツ”っていう一番たち悪いタイプだったから、本編始まる前からもうツライっていう…

 

そんな中で気分転換も兼ねて博士論文のためにスウェーデンに行く旅についていくんだけど、そんなアンバランスな状態で他人と行く旅行なんて絶対休まらないしむしろ悪化すんだろ…って思った所に祝祭とホルガ村ですよ。

すごい奇祭!っていうより様子がおかしいな…ってレベルのバランスが絶妙!そして村から出れそうにない雰囲気(ここ重要)っていうのがね…これ完全に「田舎にいったら襲われた」系ホラーの最新版ですね。

 

んでそっからまぁなんやかんやあるワケなんですけれども、ショッキングホラー!っていうよりじわじわ〜っと不気味で不穏な空気が充満していくってカンジは前作『ヘレディタリー』でも感じていたので、これはもうアリアスターの味なんだろうなぁと思いました。

 

アリアスターって“空気”にすごく敏感だと思う。村から出られないっていうのも帰る手段がありません、とか門が閉鎖されてます、とかそういう物理的に不可能だから〜っていうのじゃあなくて、「今のところまだ自分に危害は加わってないし、みんなもいるから大丈夫だよね…それにひとりで出るのも見捨てたみたいで悪いし…」っていう同調が無意識に働くから居続けるっていう仕組みで、これ別に現実社会でも全然ありえる現象だよね?今まさにコロナのマスクとかいつ外せばいいのか探ってるワケだし。

 

そういう点で今作は「解放」がテーマになっていると思っていて、ダニーは期せずしてホルガ村に行くことによって現実と物理的な距離がとれ、家族や友人・自身の不安症などの“社会のしがらみ”から解放される。そしてフラットになる。ハッピー。

 

 

 

なわけねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーのがアリアスターですよ。

 

 

 

「解放」と同時に「依存」も描いているので厄介極まりない。

確かに家族や恋人や社会や世間体からは解放されたけど、それまでの生活がどうだったかというと、自立してないんですよ。ダニーは。

自分から主体的に動かず、事なかれで流されてきた。それが楽だから。本当の自分、なんて程のいい事を言うけれど、それは単に自分が楽したいだけなんじゃあないの?なんて嫌なメッセージが聞こえてくるんですよ。

 

 人は孤独では生きていけないけど、だからといって自分を受け入れてくれる場所が素直に見つかるかというと全員がそうという事ではなくて。(当然ですが)

今作のダニーはまさにそんな人間で、そんなダニーが劇中内で様々な出来事に触れ、そこで彼氏とのすれ違いや“より楽な依存先”を見つけてしまう。

だからラストのダニーの表情なんかはまさに"ダニーにとっての"ハッピーエンドそのものなんだけど、それを観ている側は「結局何かしらのコミューンに属していないと生きていけないいきもの」=ヒトという事実を突きつけられるから、ものすごくバツが悪いっていう。しかもそれを堂々かつ残酷なまでに見せつけてくるっていう始末。

家族であったり恋人であったり宗教であったり…その居場所に依存してしまう気持ちはめちゃくちゃわかる。ホルガ村はかなり特殊だけど基本的に外界から閉ざされていて、生きていく上では何不自由なく、穏やかなまま生き、そして死んでいける生活…なんとも幸せじゃあありませんか。ホレホレ。

けどねーーーーーーーーーーーー抗いたくなっちゃう気持ち。これが人間の業(カルマ)ってやつ、ですな。

 

他にはタペストリーによって先の展開を教えてくれるから親切設計だな!って思ったりしました。あのタペストリーの絵柄がなんともいえない味のあるシュールさを醸し出していていいんですよねぇ好きです。あと表現が露骨!特に惚れ薬のところなんかストレートすぎてね(笑)

なんだったら冒頭バンバン出てくるし(背景にかかってたりする)、そこでもう今後の展開を暗示(むしろ予言)してるから、オチバレ先にかましてきてるっていうね(笑)

 

まーーーーーーーーーとにかく生理的にイヤーな映画作らせたらクオリティ抜群に仕上げてくる監督だっていうのが改めてわかりましたね!

次作は4時間のコメディなんですって?しかも『ヘレディタリー』『ミッドサマー』と次作で3部作になるとな?それなら次作も付き合わなきゃな…ってカンジでアリアスター最新作を待ちたいと思います。

 

 

 

 前作。そういえばアリアスターってコレの「コッ」とか『ミッドサマー』の「ホッハッ」とかそういう音の引っ掛かりをよく作るよね。

ヘレディタリー 継承(字幕版)

ヘレディタリー 継承(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: Prime Video