バンクシーというコンセプト『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』
2019年4月下旬の東京でも本人らしき作品があったと世間を賑わせているアーティスト・バンクシーが、2013年にニューヨークの街を使って「1日1作品展示していく」と謳って開催されたゲリラアート“バンクシー・ダズ・ニューヨーク”一ヶ月間の模様を収めたドキュメンタリーです。
今作はバンクシーの監督作ではないので『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』とは直接的な関係はないのですが、最早バンクシーというアーティストの作家性という点で言えば完全に続編、連作となっています。
というか個人的にバンクシーはアート・政治・資本主義・戦争と平和などなど高尚なテーマそのものが如何に陳腐なものなのか。大仰に捉えられ、小難しい理屈で説法される存在が如何に大したものでないのか、人々がもつ意識や概念を揺さぶってくるようなアンチテーゼを提示してくるアーティストだと思っています。(故に上記のように綴っている事それすらもバンクシーの狙い通りな気がしてきて、まるで釈迦の手の上にいるような感覚に陥る)
今作も冒頭、バンクシーと書かれた風船がアパートから吊り下げる形で展示してあるのですが、それを白昼堂々盗むヤカラが出てきて警察と逮捕騒動になる、という出来事が起きます。
これもカメラという超客観的な視点から写す事によって「ただバンクシーと書いてあるだけの量産可能な風船に人々が群がり、ただの風船を盗むものも現れ、警察騒ぎになる」という異常な事態にアートって何なんだろうな…と思わされます。
現代アートの面白い点として「どんなメッセージを発信するのか」という風刺画に期待するようなワクワク感があると思います。
絵画はメッセージを抽象化していく事で象徴を表したりしていくので高尚さが増すと思うのですが、バンクシーはよりストレートに表現しているのでわかりやすく、だからこそ仕掛けが非常に活きる。まさに現代アート的であり、そしてその活かし方を熟知しているアーティスト。
路上で見知らぬおじいさんに自身の絵を60ドルで売らせ、それを人々が素通りする様を撮影した“作品”なんかはその最たるような物に思えます。
30日間の連作を観ていくことで作品そのものだけでなく、追いかけるファンやそれで金儲けを企む人々、メディアや批評家の反応などそこから生まれるドラマへの広がりも含めてアート作品に見えてくる。5pointzの騒動なんかまさにアートからアートへのメッセージ的でもあるし警鐘でもある。
バンクシーという作家が生み出すグルーヴ感を体感することができる非常によくできた映画でした!
『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』観た
— バシ (@bashix4) 2019年4月20日
どこまでが計画通りでどこまでが偶然なのか。NYを巻き込んだ壮大なライブアート月間の模様は、こんなにも人々を惹きつけるアートとは何なのか?と考えを巡らせずにはいられなくなる
『イグジット〜』と同様にアートに対する認識や価値が揺さぶられる一作! pic.twitter.com/DICd56RFBY
前作と言っても過言ではない作品