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”愛“という形のない何か『愛がなんだ』と『寝ても覚めても』

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GWを越えても唯一興行成績を伸ばしていた本作、邦画全然観てなかったなぁーという事で観てきました。

ついで?に去年話題になり、今作と関連して挙げられているのをたまに見かけていたので、こちらも揃って感想書きたいと思います。

 


「愛がなんだ」予告編

 

まず『愛がなんだ』。

タイトルの通り「愛ってなんだ?」という要素と「愛がなんだってんだよ!」の要素どっちも孕んでいる、誰しも経験あるであろう恋愛の酸っぱさを見せつけてくる作品でした!

 

今作は「片想いの螺旋」の物語だと思っていて、故に付き合った経験がなくても刺さる内容だと思うんですよ。あの人に尽くしたい・振り向いてほしい・そばにいたい等の愛ゆえの献身さ・盲目さを与える側も受ける側も平等に描いていて、それは客観的に見たらものすごく滑稽なんだけど(マモちゃんの痛々しさ!)だからこそ人間くさいし、なんで好きになっちゃうんだろうなーっていう理屈を越えた部分が見えるしわかる。盲目的な恋って打算じゃあないよなーって思ってしまう。そんな時もあったなぁなんて。

しかも片想いだから成就しない状態が続くのですが、だんだん観ているうちにこの距離感・この関係性が実は一番幸せなのかも…と思ってしまいました。例えるなら少女漫画の連載のようで、すれ違ったり邪魔が入ったりライバルが現れたりする一喜一憂する時は燃え上がったりして面白いけど、「付き合う」というゴールに達したら(だいたいの場合は)「別れる」という哀しい結末に向かってしまうのだから、それならば終わりを迎えないまま永遠に続いた方が…という心理が働いてしまっているような。

 

主な登場人物5人のキャラクター、関係性も立っていてどこかしら感情移入してしまいます。特に若葉竜也演じる中原は同性なので余計に感情移入してしまったり。彼の「幸せになりたいっすねぇ」は今作でも上位に入るセリフだと思います。というか中原と主人公の照子は完全に対をなしているので、だからこそ終盤のご飯たべてからのシークエンスは見ていて本当にツラい…この映画の中で一番将来が気になるキャラクターと言っても過言ではないと思います。

あと5人のバランスとか切り取り方なんかは『桐島、部活やめるってよ』を連想したりもしました。片想い版桐島っていうのが一番わかりやすいかもしれません。

 

片想いという病に罹患した人達に迫った、愛に特化した普遍性を持った映画でした。

 

 

一方『寝ても覚めても』はどうだったかというと、これが『愛がなんだ』とは真逆のアプローチをかけてくる映画でして。

 


映画『寝ても覚めても』90秒予告

 

こっちは運命的な出会いをした相手とよくある出会い方をした相手。中身は違うのに見た目はまったく同じ。という所から何を持って愛が生まれるのか、その“わからなさ”を描いている作品でした。

 

『愛がなんだ』と比較していくと今作の主人公である朝子は照子と比べて何を考えてるのかわからない部分が多く、照子が感情移入しやすいようにバストショット(距離感を近く感じる)で撮っていたのに対し朝子は引きのショットが多い(距離感を遠く感じる)ので、その辺りからも意図的にわからない部分がある人物として捉えようとしていると思います。

また、照子はリアクションや行動などの動的な部分でキャラクター表現をしているのに対し朝子はうまくいってるハズなのに何かしこりがある…という微妙な動き、静的な部分でキャラクター表現している点も挙げられると思います。

描いている部分は似ているのにアプローチの仕方が全然違うんですよね。

 

しかも今作は「まったく同じ顔の人間が現れる」というファンタジー色の強い設定なので一見こういった現実思考な恋愛映画とは相性が悪く思えるのですが、これがかえって「何が決め手になって好きになっているんだろう」というわからなさ、論理を超越する感情という部分に更なる強度を生んでいると思います。後半の展開なんて完全にドッペルゲンガーなので一種の恐怖すら覚えます。

まったく同じ顔ではないにしろ「好みの顔」という物自体は誰しも持っているものなので、その極地としての同じ顔なので、実際に見ていても違和感を覚えないのかなぁと思います。劇中でも「確かに似てるって言われた事あるなぁ」と言っている辺りでも、よくある話として現実感のあるものとして感じられるようにしているのだと思います。

 

またこの映画、構図や撮影で美しいショットもバンバン出てくるので、その見事さに目が奪われる事もしばしば。

特に印象的なのは昼と夜で同じ高速のルートを車が向かって行くシーンで、昼間は当然視界も開けていて見通しが良い、安心して観れるカットになっているのですが夜になると一変。街灯もなく車のライトしかついてないので見通しが悪く、どんどん暗闇に光が吸い込まれていくようなカットは同じルートなのにものすごく不安を覚える印象になっています。

 

“愛”という形のないものに右往左往させられ、正常な判断も失わされる得体の知れないモノの存在を描いた、まったく先の読めない作品でした。

 

 

どちらも「大人の恋愛模様」を描写しながらも、まったく別の感想をもたらしてくれる。連続して観ると尚更理解度が深まるような満足度の高い二本立てだと思います!

 

 

 

 

今書いててもう一回観たくなってきた…

寝ても覚めても

寝ても覚めても

 

 

大人の恋愛模様映画繋がりでこちらも連想したりしました。

南瓜とマヨネーズ

南瓜とマヨネーズ